ありもしなかったこと、捏造。
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最近、若干偏った作品ばかり観ていたのでたまにはこういうものも、と思い観てみる。元々竹中直人の作品は個人的にそれほど嫌いではなく「無能の人」「連弾」などは、なんだかんだで邦画ランキングのそれなりに上のほうにくる・・・と思う・・それなりにね・・
竹中の一連の作品は彼独特のクサい演出が観る人に合う、合わないで好き嫌いの別れるところだろう。それは竹中の出演する映画にもいえていて、彼が「あの」オリジナルの歌を歌うときや「あの」独特の踊りを踊るときにある種の気恥ずかしさが湧いてくるのは確かで、本当は監督は「いや、竹中さんやりすぎです・・」といいたいところをグッと堪えているという現場が想像できるのだが、竹中自身が監督、つまり自分をプロデュースする時には彼は非常に心得ていて「あの」過剰なスタイルがうまく演出される、というか映画全体が「あの」雰囲気になるのでそこまで過剰さは気にならず、むしろ映画的に映えたりするのである。
劇中、学生時代は影が薄く、気持ち悪がられていた主人公が、大人になりモテモテな状態だったりその他ご都合主義的ロマン主義な部分*1も目立つが、こういう願望を投射した映画が必要ないということは決してない。
竹中に惚れる女、原田知世、中島唱子、水田芙美子の3人がなかなかよく、水田に関しては知らなかったのでネットで調べる→幻滅・・のパターン。
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役所広司のあのニンマリとした悪巧みの顔は誰にも真似できない。
今まで一度も腹を抱えて笑ったことの無い検閲官の向坂が、ラスト、作家の椿の書いた台本を腹を抱えて笑うわけだが、問題は「いかに台本が面白くなっていったか」という事ではなく、検閲官演じる役所が「いかに面白くなかったものを面白いと思えるようになっていったか」という部分、洗脳のプロセスにある、つまり笑いを共有することは、この場合「お約束」というイメージの共有なくして成立しないのである。
笑いの解らない向坂に「こういうことが面白いということなんですよ」を教育する椿、次第に向坂も「そういうことが面白いということなのか」を解るようになる、それが本当に面白いかは別にして*2・・・表現を統制していたはずの国家権力(向坂)が、最終的に表現を統制される側にまわるという皮肉さをもって、そこに新たな構造の問題が表出する。
この「構造」と「イメージの共有」が示唆する文化・社会のありかたに脚本の三谷幸喜がどこまで意識的なのかは知らないが、監督の星護の今後に期待しましょう。
★★☆3.5