知ること、不安。

空中庭園 通常版 [DVD]

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★★★☆3.5
家族は無自覚に家族を営む・・小泉今日子演じるエリコの行動・思考原理はトラウマ化された幼き日(捏造・非捏造)の記憶が原因かのように描かれているが、トラウマはあまり関係ない。(この映画にトラウマ描写が多すぎて「あぁトラウマが原因ね・・」と思考停止的に数多のトラウマ映画と見られてしまうことは、よろしくないと思われ・・)


僕らは幼い頃、「嘘をつかない事」や「学校から帰宅後夕食中に何でも話すこと」を良いことだと、社会に、大人に教えられてきた。
エリコは純粋に、幼い頃にモデル化された家族像を追い求めているだけの真面目な母(融通の利かないくらい真面目な人間)であるにすぎない。僕らの周りにある、もしくは僕らの家族を、少しだけ過剰にしたのが京橋家で、エリコの「過剰さ」以外、僕には誰も異常には見えない。
ではその「過剰さ」こそが、家族崩壊の最大の原因なのか?いや、エリコがあそこまで「家族」であることに過剰であったがゆえに、ラスト京橋家に幸福が訪れる。「家族」であることに過剰じゃない、「家族」であることに無自覚な僕らに、あの諦念的幸福は永遠に訪れえない。

問題は家族が崩壊しているという事ではなく、エリコや僕らが思い描く家族像が崩壊しつつあるということではないか。
エリコの母(大楠道代)と家庭教師(ソニン)の誕生日会も、エリコの誕生日会も同じく、それぞれが役割を演じているという事に変わりは無いが、その決定的な違いはそれぞれが役割に自覚的か否かである。何故にそこまでして「家族」を演じようとするのか、しなければならないのか・・映画ラストの諦念的幸福が僕らに自覚的な家族の未来像を示す。


エリ・エリ・レマ・サバクタニ 通常版 [DVD]

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★★★☆3.5
劇中の音楽トラック、中原昌也のノイズワーク、浅野忠信のノイズギター、かっこよすぎる。
ゴダール『アワーミュージック』の主題である、見えないものを映画によって見ようとする欲求を青山的にアプローチしたものなのか?浦沢直樹20世紀少年に呼応したものなのか?どちらともうまく繋がらない・・・が青山真治の音楽センスは信頼できる。素晴らしいです。中原昌也筒井康隆が怪演!? id:maTree氏は是非!



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